「メンタルモデル」とは、マインドセットやパラダイムを含め、それぞれの人がもつ「世の中の人やものごとに関する前提」です。自らのメンタルモデルとその影響に注意を払い、うまくいかないときには外にその原因を求めるのではなく、自らのメンタルモデルの欠陥を探求します。
推論の梯子は、メンタルモデルがどのように形成されるのかを表します。

出典: ピーター・センゲ他著『フィールドブック 学習する組織「5つの能力」(The Fifth Discipline Fieldbook)』に紹介されている派生モデルに少し修正を加えたモデル
推論の梯子の最初のステップは観察です。私たちが日々の生活や活動の中で、さまざまな体験をし、たくさんの事実に触れています。
今日一日を振り返ってみてください。どのような体験がありましたか。仕事やプライベートでの体験、成功体験、失敗体験など。その体験を通じて、あるいはテレビや新聞、 書物などを通じて、たくさんの事実に触れたことと思います。私たちは、さまざまな体験や事実の中から、特に自分にとって意味のある事柄を取捨選択しています。同じ体験をしても、映画を見ても、印象に残っていることが人によって違うという経験はありませんか。観察可能な体験と事実の中から、私たちが、観察する事柄を選んでいるからです。
次のステップは、評価です。私たちは、観察した事実や体験に、個人的な意味づけをします。解りやすい例として異文化体験を上げましょう。海外のお友達との交流体験を通じて得た事実をもとに、お国柄を評したことはありませんか。
メンタルモデルは、このように、経験を通じて観察した事実をもとに、私たちが持つ評価のことです。メンタルモデルは、私たちが物事を捉える際の判断の尺度となります。特に、自身にとって強いインパクトがある事柄や、何度も同じ体験をしたり、同じ事実に触れた場合などは、このメンタルモデルが、確信となり、私たちが物事を捉える際のレンズの役割を果たします。
メンタルモデルは、私たちが体験や事実の中からどのような事実を選ぶのかに影響を及ぼします。同じ体験から得る学びが違う、同じ本を読んでも、印象に残る箇所が違うなどの原因となります。
学習する組織における学習者は、経験や事実からの学習において、評価判断を保留にして物事を捉えることができます。また、観察した事実に対する評価をした際には、推論の梯子を一段ずつ降りていくことにより、自己のメンタルモデルを認識することができます。

メンタルモデルによって正しい意見が分かれます。Aさんは、②が長いと主張し、Bさんは、①と②は同じ長さだと言います。なぜそう思うのですかと聞くと、Aさんは、「長く見えるから」、Bさんは、「測定した結果同じだから」と言いました。あなたは、どちらが正しいと思いますか。Aさんと、Bさんのメンタルモデルにはどのような違いがあるのでしょうか。
広告の世界で働くAさんにとって、視覚にどう訴えるかが重要な判断の尺度です。そこで、Aさんは、「視覚」という判断の尺度を用いました。一方、建築家のBさんは、測定値以外に、長さの判断尺度は存在しないと思っています。そこで、迷わず「測定値」を判断の尺度に用いました。
では、正しいのは、Aさんでしょうか。Bさんでしょうか。メンタルモデルを理解している学習する組織の学習者は、こんな時、目的に照らして判断をします。もし、この議論が、設計図面の話であれば、「測定値」に基づく判断が正しいことになります。しかし、もし、この議論が、ポスターのデザインの話であれば、「視覚」に基づく判断が正しいかもしれません。
私たちが日ごろ、当たり前と思っている事柄についても、このようにメンタルモデルや推論の梯子を意識する習慣を身につけると、新しい世界が広がります。「私は、なぜそう思うのか。その判断の背景にはどのような経験や事実があるのか」を問いかけてみてください。
【図解】 目的に照らし合わせて判断尺度を選択しましょう
